研究課題
本研究の目的は、高齢者の当事者主権が、介護者の権利やケアの質とあわせて保障される介護体制のあり方を展望するという構想のもと、高齢者の当事者主権を促す形態とされる「介護給付使途の自己決定」モデルについて、自己決定の支援機能、介護者支援、ケアの質確保という3つの視点から、ローカルな実践事例に立脚した分析を通じ、その充実・整備にむけた制度運営や諸アクター間の協働に関する課題および展望を提示することを目的とする。最終年次にあたる23年度は、高齢者と介護者双方の当事者主権を尊重・促進する介護システムの実現にむけた政策課題、制度運営や諸アクターの協働に関する課題と展望について、具体的には以下の点についての検討を行った。1)国際動向把握や国際的な介護給付データ分析による日本の介護制度の現状評価、2)地域での生活継続に求められるケアのあり方、そのための制度・供給システム、ケア/介護従事者の人材育成の展望について、国内・国外でのヒアリング調査等に基づき検討した。1)に関しては、OECDの国際比較データに基づく日本の介護給付パフォーマンスの国際的・相対的な評価、2)に関しては、持続可能な介護人材の確保育成システムの示唆的事例として、フィンランドにおける社会・保健医療ケア基礎資格(ラヒホイタヤ)の養成制度に関する調査を実施した。その上で、日本の介護制度の現状を、理論的および欧米の動向(北欧等における普遍主義的福祉国家の再編と、アメリカ等における新自由主義的な国家における介護の公的保障・支援の展開)をふまえつつ、単なる「消費者」ではなく、個別的な社会サービスへの権利のみでもない、地域における包括的な生活支援への社会的権利を展望し、そのために制度・供給システムに必要となる機能・ケア/介護者の社会的評価のあり方について整理した。これらの調査研究の成果は、国内外の学会報告、複数の雑誌論文や博士学位論文の執筆を通し積極的に公表した。内訳は以下の通り。雑誌論文5(査読有1)、博士学位論文1、国際学会報告1(査読あ)。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
社会政策
巻: 第3巻第3号 ページ: 78-89
地域ケアリング
巻: Vol.14、No.1 ページ: 29-39
巻: Vol.13、No.13 ページ: 31-36
保健医療科学
巻: 第60巻第2号 ページ: 138-147
Community, Work and Family IV International Conference, 19th-21st May2011, Tampere, Finland. Contribution paper