本年度は、わが国の高齢者ケア施設に勤務する職員が、ターミナルケアに対してどのような意識を有しているか検討するために、高齢者ケア施設に勤務しているケアワーカーを対象としたインタビュー調査によるデータを分析した。具体的には、ターミナルケア実施の経験と、ターミナルケアを行ったことによって、どのような心理的変化があったのか、肯定的・否定的両側面から検討を行うことを目的とし、インタビューによるデータをテキスト化した上で、質的分析ツールを用いて解析を行った。なお、調査対象となる介護施設および介護職員に対しては、匿名性が守られ、個人や施設に関するデータを公表することはないことを説明し、同意を得た上で調査を実施した。その結果、ターミナルケア実施については、ストレスであるという否定的側面も認められたが、ターミナルケアに携わることによって、介護職員としての充実感があるという肯定的側面も認められることが明らかとなった。しかしながら、ターミナルケアに携わる職員については、職員歴が長く、経験豊富な者が多いという傾向にあることも明らかとなった。そのため、否定的評価を行う者は、ターミナルケアを担当する率が低いことや、離職してしまった可能性も考えられる。今後は、インタビューに加えて、大規模な調査を行い、ターミナルケア実施が離職等に及ぼす影響についてより実証的に検討する必要があると思われる。 また、ターミナルケア実施に関わる施設要因について検討するために、厚生労働省等で公開されているデータの二次分析を行った。病院以外での死亡割合との間に有意な関連が認められた要因について、都道府県別に検討することによって、施設でのターミナルケア実施を可能とする要因の示唆が得られた。今後は、施設での死亡率が高い都道府県について、さらに詳細に分析を行い、疼痛コントロール環境の整備や労働条件についても検討を加えていく予定である。
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