研究概要 |
本年度は、前年度と同じく財団法人介護労働安定センターのよる2007年度介護施設雇用管理実態調査のデータを用いて分析を行った。本研究では、ターミナルケアの経験を独立変数とし、労働条件や仕事上のストレッサーを媒介要因として布置したモデルと、労働条件や仕事上のストレッサーを独立変数とし、ターミナルケアの経験を媒介要因として布置したモデルを構築し、構造方程式モデリングによる分析を行った。その結果、Anderson & Gaugler(2007)とは異なり、ターミナルケアの経験が他の変数を媒介して、直接的にバーンアウトに影響しているというモデル(媒介モデル:x^2(20)=112.23,CFI=.992,GFI=.976,RMSEA=.075,AIC=72.23)よりも、ターミナルケアの経験が、他の変数を媒介した上で、バーンアウトに影響しているというモデルの適合度が高いことが明らかとなった(x^2(18)=57.75,CFI=.992,GFI=.987,RMSEA=.052,AIC=21.74)。また、媒介要因として、もっともバーンアウトに強い影響を与えていたのは、「従事している業務の量と質」因子であった(β=-.30,p<.005)。本研究結果から、ターミナルケア実施の経験が直接的に介護施設職員のバーンアウトをもたらしているのではなく、従事している業務の量と質によって結果に影響が出ることが示唆された。つまり、介護施設職員の業務に余裕があり、落ち着いて看取りを迎える環境が整っていれば、ターミナルケア実施の経験は、バーンアウトに陥る可能性を低めるとともに、職務への効力感をもたらすが、そのような環境にない場合は、看取りを行うことがストレスになりうることが示された。今後は、ターミナルケアに対する職員の認知的評価や、死に対する恐怖や不安などの死生観が及ぼす影響について、関連要因に含めたモデルの分析が必要と考えられる。
|