研究課題
本研究の目的は東洋と西洋における言語表現の文化差の実証的検討にある。これまでの研究において、東洋においては人々はより間接的に自己表現し、西洋においては直接的に自己表現することが示唆されている。この議論は広く普及しているが、実証的検証は乏しいため、本研究ではこの自己表現の文化差に関する実証的検討を行う。本年度は西洋文化のサンプルとしてアメリカ及びオーストラリアにおいて、東洋文化のサンプルとして日本において質問紙調査を実施した。その結果、先行研究における理論的考察とは一貫しない結果、すなわち間接的自己表現において日本人とオーストラリア人との間に文化差はみられず、むしろ日本人はアメリカ人に比べより直接的自己表現をする傾向すらみられた。分析の結果、東洋においても西洋においても、人々は自分が置かれた環境に応じて自己表現を変える可能性が示唆された。この結果から、従来考えられていた自己表現の文化差にはより複雑なパタンを示すことが考えられる。これらの成果はオーストラリアのメルボルン大学におけるセミナーにおいて報告され、国際社会心理学会、アジア社会心理学会において研究発表として採択されている。また、来年度行われる第20回国際文化比較心理学会において報告する予定である。さらに論文としては、北海道大学実験社会科学研究センターのワーキングペーパーとしてまとめられている。今後の研究プランとして、1)本研究で得られた成果を発展させ、日本以外の東洋文化(香港)で調査を行い、本研究との結果を比較する、2)誰に対して自己表現を行うかという状況を操作して調査を行う、という2点を計画している。これらのフォローアップ研究のデータを追加した上で、本年度の研究成果を国際学術誌に投稿する予定である。
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Center for Experimental Research in Social Sciences, Working paper series
http://lynx.let.hokudai.ac.jp/cerss/index.html