本研究は、安全講習の効果を高める手法として仮想的に事故やリスクを体験させるプログラムの効果について、1) リスク認識におけるギャップの修正と、2) 感情的高揚の寄与について明らかにすることを目的としている。リスク体験プログラムには様々なものがあるが、本研究ではドライビングシミュレータを用いた運転講習と、メーカーにおける安全作業を目的とした作業研修とを取り扱う予定である。21年度は申請内容に沿い、前者の運転講習を想定した実験を実施した。想定された教習内容は、見通しが悪く信号の無い交差点におけるサンキュー事故に対する意識向上を目指すものであった。実験対象はサンキュー事故を起こしやすいとされる60歳以上の高齢ドライバと、若年ドライバであった。これらの被験者を、サンキュー事故を起こすリスクを実感させるリスク体験群、リスクを実感させず、運転後にデータを再生してそのリスクを呈示する群、等に割り当てた。本研究ではリスク体験効果の持続性をも検討対象としているが、この実験においてリスクについて学習した効果を1年後、同じ被験者で確認するためには必要な実験であった。ただ、申請者は21年度の6ヶ月間、イギリスのロンドン市立大学において研修しており、時間的な制約より、データを収集した被験者人数は当初予定していた人数に達していない。そのため、不足分は22年度5、6月に収集する。また、結果は22年度8月の計測自動制御学会、ならびに9月の日本心理学会において発表する予定である。
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