研究概要 |
集団意思決定の結果の受容かかわる要因をゲーミング・シミュレーション「ステークホルダーズ」の開発と実践により、主に以下の3点から検討を行った。 1集団決定の手続きと結果の受容の関連の検討 1年目に開発した食品選択課題にくわえ、循環型社会づくりに関して実際に行われた市民会議での討論内容をゲーミングのコンテンツとし、循環型社会の評価基準をプレーヤ自身が設定する場合と予め設定された場合を比較し、個人の優先順位づけと集団決定の結果の受容との関係を明らかにした。また、従来説得的コミュニケーションの研究・学習ツールとして位置づけられていた「説得納得ゲーム」(杉浦,2003)を、自然エネルギーの地域への導入をテーマとした課題を設定して検討し、説得的コミュニケーションと集団決定との関連を検討した。 2教育効果の測定 実際の教育場面において従来の実験室実験とは異なる学習手法としてゲーミングを位置づけ、個人の利得を最大化させることに動機づけられた学習者(プレーヤ)が議論の質や結果の満足度を他者と比較することにより教育効果を検討した。その結果、集団内での利害調整がうまくいかないことで満足度が低下することを、プレーヤが獲得した得点の分散と満足度の間の相関係数から明らかにした。 3文化交叉的検討 実際の事例を用いて利害調整の課題を行ってきたが、日本の事例だけでなく、EUにおける利害対立の事例の調査を行い、課題としての活用を検討した。具体的には、ドイツ連邦共和国ザクセン州のドレスデンにおける地元住民の交通の利便性と,世界遺産として登録されていたエルベ川の景観との利害対立に関して調査を行い、ゲーミングのコンテンツ化をはかった。
|