研究課題
まず、CMCにおけるDSITの適用を検討するに当たって前提となるアイデンティティの問題について、アイデンティティの多様な定義とそれに基づく心理学的なアプローチについて検討した。対人間コミュニケーション・メディアとしてのインターネットの特徴がどのように人間行動に影響を与えるのか、という問題提起に始まり、脱個人化作用や、社会的アイデンティティ、自己開示、自己同一性といったテーマにおいて、オンラインにおける人々の行動を扱う心理学的研究が行われてきた。インターネットにおけるアイデンティティを考えるためには、アイデンティティがない状態である匿名性について検討する必要がある。インターネットにおける匿名性とは決して単一の現象ではなく、単に相手を見ることができない、という視覚的匿名性から、ハンドルネームなどを使って代理人格を作り上げるアイデンティティの乖離、さらには人々の行動がまったく区別できない識別性の欠如まで、階層的な構造をとっていると考えることができる。様々な水準の匿名性のもとでコミュニケーションを行う場を提供することができるインターネットは、まさしく「アイデンティティ実験室」であり、親和と自律という2つの相反する目標に対して、自らの欲求に応じて自在にアイデンティティを使い分けることができる場でもある。協同の場、創造の場としてインターネットが今後活用されていくためには、様々な活動の根幹にある人間心理の動機に与える匿名性の効果について今後研究を続けている必要がある。次に、インターネットにおける態度変容を検討するにあたって、予備調査としてネットリサーチを利用した社会調査を行った。この調査では、たばこの値上げに対する心理的反応について、さまざまな側面から測定を行うことにより、実験による検討を行う際に必要なパラメータの測定の推定の道具とした。
すべて 2009
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Journal of Cross-Cultural Psychology 40
ページ: 567-583
人工知能学会誌 24
ページ: 535-543