本研究の目的は、この態度の両価性について、複雑系理論の枠組みに基づいた態度の動態的性質として概念化を行い、現在社会心理学において盛んに研究が行われている顕在的態度・潜在的態度の2分法に基づく2重態度理論の視点から検討を試み、統合的に理解することである。説得研究や態度変容研究において現在中心的な位置を占めるのが、精緻化見込みモデルや、ヒューリスティック・システマティック・モデルといった認知処理の2重過程モデルである。このパラダイムの元で、関与や認知的負荷の高低、ムードなどが認知処理の水準の深さに影響を与えることが数多くの研究によって示されている。本年度は、昨年度作成した実験材料を用いて、マウス・パラダイムによって動態的測定を行う本実験を行った。この本実験においては、態度の両価性が高い場合において、システマティックな処理がより促進されるという仮説の元に、上記のような認知的処理の水準の深さに影響を与える要因の効果を実験的に検討した。 また、比較文化的研究の視点から、同デザインの実験を欧米圏において実施し、結果の比較・検討を行うための準備を行った。本年度は、海外の共同研究者の協力を得て、まず刺激材料の翻訳を行った。曖昧さへの寛容性について東アジアと欧米の対比を行うことにより、東アジア的認知スタイルの特徴であるとされる弁証法的思考法を個人差として尺度を用いて測定し、潜在的・顕在的態度の変容との関連性を検討することが可能となる。
|