平成21年度は、実証データの収集とビデオ分析を中心におこなった。138組(一卵性71組・二卵性67組)から個別の発達調査ときょうだい遊び、親子遊びの観察データを収集した。二種類のコーディングシステムをもちい、きょうだい遊びの行動観察データの分析を進めた。きょうだい遊び16組分の行動観察データを元にした評定者間の一致率は、α=.77~.84であり、信頼性の確認ができた。22組のきょうだい遊び中の、ポジティブな情動・きょうだいとのやり取り・相手へのコントロールと認知機能・心の理論・実行機能との間には有意な相関(r=.33~.69)があった。しかし、ネガティブな情動とこれらの能力との間には有意な相関は見られなかった(r=-.01~.26)。また、ポジティブな情動及びきょうだいとのやり取りについては、一卵性の双生児相関(r=.80~.93)のほうが二卵性の双生児相関(r=.56~.65)よりも高く、ネガティブな情動及び相手へのコントロールの双生児相関は卵性による違いが見られなかった。これらのことから、きょうだい間における社会交渉の行為者効果/受け手効果として、個人の認知能力及び社会的認知能力が関係すること、また、きょうだい間の社会交渉のうち、遺伝的要因の関わるものと、遺伝的要因よりも環境要因の関わるものとがあることが示唆された。分析データ数が少ないため、暫定的な結果ではあるが、国内学会において本年度の成果の一部を発表した。
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