本研究の目的は、どのような状況においてくどのような自己認知が、適応的な自己制御を促進するのか、その関係性を明らかにすることである。促進焦点が活性化している場合はポジティブな自己認知によって利得接近行動が増進され、予防焦点が活性化している場合はネガティブな自己認知によって損失回避行動が増進されるだろうという仮説を立てて検討している。 当23年度はこれまでに実施した研究を論文化するため、論文原稿2本の執筆および投稿を行った。1本目の論文は、平成22年度に行った再分析を中心にした論文である。具体的には、自己評価のvalenceと接近回避志向の相関関係について検討し、自己評価の肯定性は利得接近志向と正相関し、自己評価の否定性は損失回避志向と正相関することが、4つの調査研究を通じて一貫して示されたことを報告している。2本目の論文は、自己評価の肯定性・否定性と利得接近志向・損失回避志向の相関関係が、制御焦点の活性化操作によっていかに変化するかについて検証した研究の報告である。結果として、促進焦点を活性化させたときには、予防焦点を活性化させたときよりも、利得接近志向と自己評価の肯定性の正相関が強く示されるだろうという仮説1は不支持であったが、予防焦点を活性化させたときには、促進焦点を活性化させたときよりも、損失回避志向と自己評価の否定性の正相関が強く示されるだろうという仮説2について支持するものであった。 また、自己制御に関する文献の講読、および翌24年度に実施する実験準備を行った。
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