研究概要 |
本研究の目的は,大学生のコミュニケーション力を育成するための働きかけとして,コミュニケーション力に関する知識提供,インターンシップ研修という体験などが,それぞれどのような効果をもたらすかを比較検討することである。平成23年度の主な研究成果は以下の通りである。 1.社会人と学生のコミュニケーション力観の比較 平成22年度までに作成したコミュニケーション力観尺度を使用して,社会人と学生を対象に調査を行った。まず,働く上でのコミュニケーション力観に関する就業者と学生の比較からは,女子学生が男子学生や就業者よりも「課題達成場面の記号化」を重要視していること,学生の方が就業者よりも「活性化と配慮」を重要視していること,女性の方が男性よりも「感情統制」を重要視していることが明らかとなった。さらに,就業者の中でも職種と性別による検討を行ったところ,コミュニケーション力観の下位尺度ごとに異なる特徴が見られた。また,女性就業者と主婦では就業者の方が多様なコミュニケーション行動を重要であると考えていた。以上のように,コミュニケーション力というものは非常に多面的かつ複雑な様相をしているということが示唆された。 2.インターンシップ研修と講義によるコミュニケーション力の変化 インターンシップ研修に参加した学生,対人コミュニケーションに関する講義を受講した学生を対象に,コミュニケーション力観尺度を使用して事前事後の変化を調査した。インターンシップ研修により,全体的に「感情統制」が重要だと考えるようになる傾向があること,達成動機が低い学生が「課題達成場面の記号化」を重視するようになること,達成動機も親和動機も低い学生が「解読と察知」を重視するようになることなどが示された。つまり,インターンシップ研修がコミュニケーション力に及ぼす効果は学生の個人特性によっても異なるということが明らかになった。
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