近年発達したメディア環境のもたらす高度な「選択性」が、どのような社会-心理的影響をもたらしうるのか、特に(従属変数として)周囲の人間関係と社会認識の二側面に焦点をあてて、各種のデジタルメディア利用がもたらす選択性が与える影響、またそれらの相互関連性について検討することが本研究の中心とするテーマである。 平成21年度は次年度以降の実証フェーズに先行する準備フェーズとして、既存の研究レビューに取り組み研究課題を精緻化すると同時に、既存のデータに関する再分析を行った。具体的には、レビューについては特にマスメディアを中心に行われてきた選択的接触等の検討に関する議論、および対人ネットワークにおける同類性(homophily)に関する実証的検討についての議論、またコミュニケーションメディア利用については、近年普及の進んでいるSNS (Social Networking Service)をめぐる研究の包括的レビューなどを特に取り上げて中心として行い、既存の知見を整理検討した。また、科研費等の他プロジェクト等を通じて研究代表者が取得済みの複数の調査データを用いて、テレビ等マスメディアの選好パターン、またコミュニケーションメディアの利用パターン、およびそれら変数と他変数との基礎的な関連構造についての予備的な分析を中心に行った。これらのレビュー、および分析作業等を通じて、次年度以降に行う独自テー取得を含む実証フェーズにおいて取り上げる基本的モデル、またそこで用いられる変数についての予備的考察を行った。
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