本研究の目的は(1)「写真投影法」といわれる手法を用いることで、子どもの危険認知の構造を把握し、大人のそれと比較すること、(2)地域安全マップを作成し、そのことによる子どもの危機管理能力の向上を確認すること、(3)Web-GIS を介した、地域の危険-不安情報を提供するシステムを構築することであった。本年度は兵庫県下の公立小学校の協力のもと、6歳から12歳までの小学生30名、およびその保護者28名を対象に写真投影法による危険認知の調査を実施した。その結果を基に地区ごとの危険場所の特徴を明らかにし紙媒体による地域安全マップを作成し全校生徒に配布を行った。危険認知の特徴として予測的側面が中学年以前には十分に形成されていないことなどが明らかになった。 また、写真投影法による調査の前後に、全校生徒の保護者285名を対象に子どもと地域に関する安全意識調査を実施した。その結果、大人が認知する危険の種類は居住地域によって大きく異なり、そのことによる子どもに対する安全教育の意識も異なっていた。また、低学年女児のいる家庭は、他の条件の家庭よりも安全に対する意識は高いことなどが明らかになっている。写真投影法による調査の前後を比較すると、調査に参加した人たちは、子どもの安全教育に対する自己効力感が高まるのに対し、地図を配布されただけの人たちは十分に自己効力感が高まらないことなどが明らかになった。これらの調査を実施する中で、Web-GISシステム構築に向けての基礎資料を収集し、同時に、地域の危険箇所に関する見回り(データ収集)の協力ボランティアを募り、登録を行った。次年度以降、これらをもとにWeb-GISシステム構築を行っていく。
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