本研究の目的は(1)「写真投影法」といわれる手法を用いることで、子どもの危険認知の構造を把握し、大人のそれと比較すること、(2)地域安全マップを作成し、そのことによる子どもの危機管理能力の向上を確認すること、(3)Web-GISを介した、地域の危険-不安情報を提供するシステムを構築することであった。平成21年度までに、兵庫県下の公立小学校の協力のもと、6歳から12歳までの小学生およびその保護者28名を対象に写真投影法による危険認知の調査を実施し、さらに全校生徒の保護者285名を対象に子どもと地域に関する安全意識調査を実施した。平成22年度にはそれらのデータの分析を行った。今年度は、これらのデータをWeb-GISシステムに活用できるようにデータの加工を行い、委託業者と地域の危険-不安情報を提供するデータベースシステム及びWebサイトの構築を行った。具体的には、(1)登録ボランティアが携帯電話によって撮影した危険場所の写真に、GPS情報を添付し当該サイトにメールすることで、Web上のデータベースに追加できるシステムの構築と、(2)PCから、当該サイトにアクセスし、必要に応じたデータを選択的に閲覧、編集出来るシステムの構築、(3)地図上に危険の種類別にそれらの写真を表示するシステムの開発を行った。(2)の機能として、子ども向けの情報では、大人の視点から子どもが気をつけるべき情報を提供し、大人向けの情報としては、子どもがどのような場所に不安を覚えるのかといった情報を提供している。これらの機能によって、従来の一枚岩の安全マップではなく、発達段階に応じた情報を提供できる。
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