平成23年度においては、人が対象(新奇な視覚刺激)への態度形成を自己制御できるか検証するために、2つの実験を行った。いずれの実験も、静かな視聴覚実験室における個別実験であり、参加者は画面に呈示される視覚刺激に対して、キーボードによって応答した。 実験1(N=30)では、態度対象として新奇無意味図形を使用した。獲得フェイズにおいては、図形Sposおよび図形Snegが呈示された直後に、等確率で快画像あるいは不快画像が呈示された。参加者の課題は、Sposの直後の快画像と、Snegの直後の不快画像に対してのみ、手元のスペースキーを押すことであった。以上のような60試行の獲得フェイズを実施した後、テストフェイズに移行した。テストフェイズでは、情動的プライミング課題により、SposとSnegに対する参加者の潜在的態度を測定した。さらに、SposとSneg以外に4つの図形を新たに加え、合計6個の図形に対する顕在的態度を測定した。以上の2つの測定の結果、参加者は潜在的測度と顕在的測度のいずれにおいても、SposをSnegよりも有意に好んでいることが明らかになった。実験2(N=30)では、テストフェイズにおける図形と不快画像の順序を入れ替えた学習を行った。すなわち、参加者は快画像の直後の図形Sposと不快画像の直後の図形Snegに対してのみ反応した。その結果、潜在的測度においては、Spos>Snegの態度は得られなかったが、顕在的測度においては実験1同様の有意差が見られた。 以上のように、ある図形の提示に対して、直後の快画像の出現に注意を向ければ、その図形への肯定的態度が形成されるが、直後の不快画像の出現に注意を向ければ、その図形への否定的態度が形成されることが明らかになった。つまり、人は注意を自己制御することにより、態度制御を自己制御できることが示唆された。
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