平成21年度は、社会的ジレンマを相互協力に導く「連結戦略」が適応的な戦略として集団内に広まるための条件を特定することを焦点に、コンピュータ・シミュレーションを用いた理論的検討を行った。社会的ジレンマと個人間交換の連結戦略を考える場合、社会的ジレンマでの行動履歴を個人間交換でどのように用いて行動を決定するかについては、論理的には更に多様な戦略が想定可能であり、具体的にどのような内容の戦略が、社会的ジレンマの解決を可能とする適応的な戦略であるのかは自明ではない。そこで本研究では、社会的ジレンマと個人間交換における行動を独立に決定することも、また一方の交換関係における他者の振る舞いに応じてもう一方の交換関係での行動を決定することも可能な状況で、どのような行動基準を備える戦略が適応的な戦略となり社会的ジレンマで相互協力を成立させるのかを検討するコンピュータ・シミュレーションを実施した。その結果、社会的交換状況を扱う2つの理論的枠組みである「ランダムマッチング状況」と「選択的プレイ状況」のいずれにおいても、「連結戦略に従事しないプレイヤーも排除対象と見なす」という特徴を備える2種類の連結戦略のみが有効に機能すること、ただ。、これらの連結戦略がいかなる形で働き、またどの程度高いレベルの相互協力を達成可能かという点については、2つの状況間で大きな隔たりがあることが確認された。
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