本年度は、小学校1、2、4、6年生の授業場面の参与観察を行った。研究成果については、分析が終了している範囲で随時速報を発表した。国内の関連学会として、日本教育心理学会、および日本発達心理学会にて成果発表を行った。 昨年度から引き続き、発話していない児童の視線に注目し、児童の参加の様相について分析を行ったが、試みに、教師の視線の向け方との関連を検討したところ、一斉授業での教師と児童の視線の向け方について、対象によっては強い関連性が見られた。第一に、発言する児童をめぐっての関連性である。教師が発言する児童をより多く見る学級ほど、同様に児童もより多く見ており、結果として机の上を見る機会が少なかった。第二に、発言する直前の児童をめぐる関連性である。教師が次に発言する予定の児童を多く見る学級ほど、児童が黒板を見る機会は少なかった。第三に、黒板をめぐる関連性である。教師が黒板を見る機会が多い学級ほど、児童は机の上や黒板を多く見ていた。以上より一斉授業において教師が発言する児童および黒板に注意を向けることは、児童らの視線配分の仕方に影響を与えることが示唆された。 本研究は、小学校授業場面を対象として、非発話時における児童の参加の具体的な様相とその変化の過程について明らかにすることを目的としている。視線に注目することによって、教室内にいる参加者の参加の様相の多様性が一部明らかになってきた。昨年度から継続して観察を実施した学年の2年間の比較、あるいは本年度入学した1年生と昨年度の1年生の比較などを実施していくことで、参加の仕方の変化過程について一定の知見を得ることができるだろう。この結果は、教師がよりよい教育実践を行っていく上での基本的な資料として活用されることが期待される。
|