説明活動のわかりやすさは、説明者ではなく聞き手によって評価される。説明者が自らの説明をわかりやすいと評価しても、聞き手の理解が促されなければ、わかりやすい説明ではない。説明活動は、話し手と聞き手との相互作用によって成立するものといえる。ここで、平成21年度は、説明場面における説明者の事前プランニング過程に注目し検討を実施した。 説明者は、説明を開始する前に、どのようなプランニングを行っているのか。また、プランニングに際して「聞き手に対する意識」はどの程度反映されるのか。これらの検討を行った結果、自分自身を監視・コントロールする認知能力であるメタ認知の高低によって、事前プランニングの質が異なることが示された。メタ認知能力が高い説明者は説明活動の設計に際して「箇条書き」「イラスト化」「グループ化」の頻度が高いことが示された。これらは、説明内容を効率的に抽出したものであり、説明の道筋を決めるものではない。このことから、メタ認知能力が高い説明者は、プランニングにおいて最低限の説明内容を確認する一方、相手に合わせて説明方法や順序を変化させている可能性が考えられた(学会発表:説明活動における事前プランニング過程の検討)。 本研究の成果について、多様な領域で発表を行っている。まず、日本LD学会では、発達障害を持つ児童に対する説明指導に関する提言を行った。次に、キャリア教育のあり方に関して、キャリア教育受講者の目的設定や理解度、態度変容などの側面に注目し、受講者に合わせたキャリア教育のプラン構築の重要性について提言を行った。本研究の知見は、教育心理学の枠を超え、多様な領域において有効であると考えられる。
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