平成23年度は、本研究における最終年度である。研究計画では、これまでの研究期間(H21~22)における研究テーマ(説明プランニングの質の検討、説明プランニングの違いによるわかりやすさの検討)から得られた知見を統合することを目的として設定していた。これは、これまでに得られた研究成果に基づき聞き手にとってわかりやすい説明を行うために必要なプロセスを検証し、それを社会に還元することを目的としたものである。研究成果の社会還元に際して、H23においては研究対象とする説明場面の変更を行っている。これまでの研究においては、主にコンピュータ操作場面を研究対象とし、説明者と学習者が一対一の場面のみに注目してきた。ここで、近年の教育場面における説明活動への注目の高まり(教育の質保証、PISAなど)に合わせて、教育場面における説明(教授活動)のわかりやすさに関する検討を行った。具体的な手続きとして、大学生に対して、わかりやすい授業のあり方に関する議論を行わせ、さらに、学生の観点に基づく授業評価アンケートの評価項目作成・実施を行わせた(投稿中)。まず、大学生の授業評価観点として、わかりやすさに関する項目として「聞き取りやすさ」「双方向性」「学生の理解度に対する配慮」などが見られた。この結果は、説明者は聞き手の「目的」「理解度」「置かれた状況」に基づき、適切な説明内容の取捨選択が必要であることを示しており、これまでの本研究から得られた知見とも合致する結果であった。次に、学生が作成したアンケートを実施した結果より、学生がわかりやすい授業として評価する要素として、特に教員と学生との双方向性が重視されていることが示された。この結果は、教員は学生の理解度をチェックし、それに対して適切なフォロー(次回授業における補足)が求められていることを示している。教員が授業を行う際、ほとんどの場合はシラバスなどの授業計画に沿って行われる。学生は、シラバスに拘束された授業ではなく、理解度や進度に合わせた授業展開を重視していることが示された。本研究から得られた知見は、特に教育活動の改善分野において有効であるだろう。
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