研究概要 |
平成23年度は,本研究の最終年度であるため,以下の点を中心に分析と考察をおこなった。 (1)遊びの中での子どもの発話・会話分析 参与観察場面での子どもの発話や会話について,特に数量概念に着目して考察をおこなった。ものを分離量的に捉えるか,連続量的に捉えるかによって変わる子ども同士の認識の違いについて,発話をてがかりに検討した。 (2)学びの連続性の検討 幼児期から児童期にかけての数量理解の発達的モデルを構築することを目的とするために,子どもにとっての学びの連続性について発達観や教育観などと関連させながら検討した。 (1)小学校での算数の授業場面での子どもの発話や教師とのかかわりを分析した。その結果,インフォーマルなつぶやきとフォーマルな発言とを区別している可能性が示唆された。このインフォーマルなつぶやきを,教師がどこまでみることができるかによって,その援助のあり方が変わることが考えられる。 (2)年少児から小学3年生までの子どもに同一の課題を用いた実験をおこなった。この実験は,均等配分とわり算の知識をみることを目的としている。実験の結果,小学校入学後に正答率の大きな変化がみられ,わり算を学習していなくても,他の演算や数量の認識が変化したことが示唆された。 (3)子どもの発達に即した教育について包括的に議論した。子どもの日常生活の具体的な文脈の中で獲得されるインフォーマルな数量の知識や,そのインフォーマルな知識が,就学後,どのように教科としての算数の単元を学習する際の基礎になりうるのか詳細に分析しているが,しかしまだ十分な知見は得られていない。
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