研究概要 |
本年度は特に「議論可視化キット」のユーザーインターフェイスの改善を行うことと目的として,大学生に本キットのVersionlを繰り返し使用して,そのプロセスの観察を行った。これを受けて,発言の種類に対応している「議論駒」の種類を改善することとした。当初,「問題定義」「意見共有」「探索的検討」「批判的分析」「比較検討」「集約」という6カテゴリ対応した駒を用意したが,学習者の直感的なイメージと対応させるのに時間がかかった。そこで,学習者がより直感的にアクセスできる様に(1) 自分の発言に関する発言を行うための「新意見」「例」「理由」「説明」,(2) 他者の発言に関する発言を行うための「回答」「確認」「付け足し」「疑問」「質問」「感想」,(3) グループ全体に働きかけるための「定義」「目標」「発言促進」「要約」「話し合い方」という,より体系化された駒を用意した。また「議論プロセス・トラック」についても,当初はホワイトボード上にマグネットシートで作成した駒を置いていくようにしたが,この方法では記録保持のために写真や動画など他の記録媒体を必要とすること,片付けや進備に時間がかかること等が欠点となることが明らかとなった。そこで,タックシールに発言カテゴリを印刷したものを作成し,紙で作られた「議論プロセス・トラック」に直接貼り付けるように改善した。この改善により,トラックそのものが記録物として残せるようになり,ふり返りの際の利便性を向上させることができた。主にこの2点を改良し,キットVersion 2を作成した。さらに,本年度は本キットの理論的枠組みについての理論論文を執筆し,現在公表に向けて仕上げを行っている。
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