研究概要 |
(1)授業中の教師の働きかけと児童の批判的思考の関連 …児童の発言の関係性を可視化する板書や、児童の発言を相互に関係づける発話などを積極的に行っている教師の授業を通じて、児童の批判的思考態度や能力が変化しているかを検討した。福岡県内の公立小学校3年生1学級31名(男児13名,女児18名)を対象に,4回分の国語授業を観察し,児童の発言の論証構造を分析した。児童の論証は根拠や推論を明確化したものへと精緻化されており,精緻化された論証を引き出す教師のかかわりとして,児童の発言を確認すること,他者の発言の検討を求めること,発問などを通じて具体的な考え方や読み方を示すこと,などの重要性が示唆された。 (2)児童の発言をきく事と感情の関連性 …授業における児童の発言への応答と、授業中に生じる教師の感情との関連性を検討するために質問紙の作成を行った。寺崎ほか(1992)、城(2008)、木村(2010)などを元に、児童の発言を聞いている際の感情についての質問項目を作成した。児童間の学び合いを取り入れた授業実践に継続的に取り組んでいる教員7名にたいして、この質問紙への回答を求め、項目の精選を行った。また、「冷静」(項目:落ち着いた,頭が冴え渡った,集中した)という感情状態と,児童の発言の論証構造をとらえて復唱するような応答の仕方や、新たな考えの展開を促すような視点を提示するような応答の仕方との間に関連がある可能性が示唆された。この、「冷静」という感情を中心に、授業中の自身の感情に対するモニターを取り入れたリフレクションの効果を検討する事が今後の課題である。
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