本研究の目的は、乳幼児期の言語知覚認知が「音声」の要素が主の処理から、「語意」の要素を伴う処理へと発達的変化を遂げるなかで、テレビなどメディアも含めた周囲からの情報が言語獲得を促進するしくみについて、音声と意味をつなぐ学習方略という観点から検討することである。本年度は、(1)低月齢児に対する言語音声の機能(0歳児)、(2)母親の発話特徴と子の言語発達の関係(0~1歳児)、(3)ビデオ映像を用いた新奇語学習時の脳活動の発達的変化(1~2歳児)の3つの研究を特に推進した。まず(1)では、3~5ヶ月児を対象として母親の発話または歌唱音声聴取時の心拍反応測定と行動観察を行った。この結果、行動反応には音声により顕著な違いが表れなかったが、心拍反応は発話聴取時に上昇、歌唱聴取時に低下がみられ、乳児の活性化・鎮静化の機能は音声により異なることが示唆された。次に(2)では、6~18ヶ月齢の期間に3ヶ月毎に母子25組の縦断データ収集を実施し、子の発声の発達的特徴および、子に音声模倣を促したり新しい語を習得させようとしたりする母親からの働きかけについて、その特徴を調べた。本年度は特に、6・9ヶ月時に子に対する母親からの音声的働きかけに着目し、発声のタイミングや音響特徴の分析を行った。この結果、母親は子が6ヶ月時よりも9ヶ月時に上昇パターンの発声を増加させること、また遊び場面の中でも使用用具により母子の関わり方が変化することが示された。また(3)では、初語出現前後の12~21ヶ月児を対象として、ビデオ映像を用いた新奇語学習場面における脳活動を光トポグラフィにより測定し、発話能力の発達に伴って新奇語の認識に関わる脳内処理過程がどのように発達的変化を遂げるかについて検討した。
|