研究概要 |
本研究の目的は、大学生(特に初年次生)の論作文産出スキル育成のための方略を検討することである。中でも書き手の持つメタ認知(メタ認知的知識やメタ認知的活動など)に着目し、これらを実際の論作文産出時に活用できるためのシステムの構築を試みることが大きな目的である。その一環として、2009年度は論作文産出時における書き手のメタ認知の構造を検討した。メタ認知の構造の検討および検討と並行して行われる尺度作成はメタ認知活用システム構築の根幹をなすものであり、本研究においては必要不可欠なプロセスである。そのため、本年度は構造の検討に多くの時間を費やした。具体的には、まずButcher&Kintsch(2001),石岡(2004),古田(2008)などの論作文採点観点を参考に、先行研究や高等学校国語科教科書等の記述も踏まえ、論作文産出時における書き手の留意事項(メタ認知的知識として書き手自身の長期記憶内に保持され、必要に応じて文章産出時に活用されると考えられる事項)を検討した。並行して、学会等での情報交換の中で論作文採点観点等に関わる情報を収集に努めた。その上で、論作文産出時における書き手のメタ認知の側面を検討したところ、おおむね「内容」「構成」「修辞」の3側面の存在が示された。次に、高等学校国語科教科書を中心として「内容」「構成」「修辞」の3観点に対応する項目(書き手のメタ認知に関連する項目)を抽出し、大学生を対象とした調査(論作文産出時における各々の事項の実行度合い)によりメタ認知の構造を検討したが、「意見・主張・考えの伝わりやすさ」「文章自体の伝わりやすさ」「全体の構成の明確さ」という、仮説とは異なる3側面が示された。
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