研究概要 |
本研究の目的は社会的情報処理モデルを用いて幼児期および児童期の謝罪発達メカニズムを解明することである。研究1では,加害児の謝罪について「悪いことをしたら謝罪する」というポジティブな過去情報と新規情報が合致するか否かによって,被害児と加害児の立場が逆転する場面での幼児の謝罪予測と謝罪の種類が異なるかを検討した。調査対象児は4・5・6歳児各40名程度であり,年齢(3:4,5,6歳児)×新規謝罪(2:有,無)の2要因計画であった。分析の結果,加害児の謝罪についてのポジティブな過去情報と新規情報が合致せずにこれまで謝罪していた加害児が新たな対人葛藤では謝罪しなかった場合,6歳頃になると,立場が逆転して自分が加害児になった際には新規情報に注目し,解決方略として謝罪を選択する程度が低くなることが示された。謝罪の種類に関しては新規情報による違いは見られず年齢が高まるにつれ誠実な謝罪の選択率が高くなった。研究2では,加害児の謝罪について「悪いことをしても謝罪しない」というネガティブな過去情報と新規情報が合致するか否かが,被害児と加害児の立場が逆転する場面での幼児の謝罪予測と謝罪の種類に影響するかを検討した。調査対象児は4・5・6歳児各40名程度であり要因計画は研究1と同様である。分析の結果,加害児の謝罪についてのネガティブな過去情報と新規情報が合致せずにこれまで謝罪したことのない加害児が新たな対人葛藤では謝罪するとき,年齢が高い者ほど,立場が逆転して自分が加害児になる場面では新規情報に着目し解決方略として謝罪を選択する割合が高くなることが示された。6歳頃には謝罪の際に被害児の謝罪情報を手がかりとし,過去情報と新規情報が拮抗する場合は新規情報を優先的手がかりとすることを示した本研究結果は,他者の謝罪行動特性についての認知が自己の謝罪選択に影響することを明らかにしたという点で意義がある。
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