研究5では,謝罪についての新規情報と過去情報が一致するか否かによって,加害児の謝罪特性についての児童の予測に違いが見られるかを検討した。小学校1・3・5年生各約90名を3群に分け質問紙による調査を行った。分析の結果,違反場面で加害児の謝罪を予測した者は,謝罪なし(過去)-謝罪なし(新規)条件では4年生,6年生,2年生の順に多く,謝罪あり(過去)-謝罪なし(新規)条件では,6年生よりも2・4年生で多かった。謝罪なし(過去)-謝罪あり(新規)条件ではどの学年でも加害児の謝罪が強く予測された。このことから,児童は謝罪についての新規情報に基づいて加害児の謝罪を予測しており,その傾向は年齢に伴い強くなるといえる。研究6では,謝罪の結果についての予測と幼児の謝罪との関連性について検討した。4・5・6歳児各約40名を,謝罪を受けた際の被害児の感情と行動を予測するように介入を受ける群と受けない群に分け仮想場面を用いた調査を行った。その結果,違反後の加害児の行動として謝罪や告白を予測する者の割合は介入を受けた場合の方が高く,4歳児でも介入を受けることによって自発的な謝罪や告白が促された。したがって,被害児の感情や行動を推測させる介入に自発的な謝罪を促す効果が認められた。研究7では,被害児の表情が被害状況に反してポジティブな場面で,被害児の感情理解を促す介入が加害児の謝罪にもたらす影響について検討した。5・6歳児各約40名を他者感情推測あり群となし群に分け仮想場面を用いた調査を行った。分析の結果,加害児の行動として謝罪・補償行動を予測する者は,6歳児では他者感情推測なし群よりもあり群で多く,何もしないことを選択した者は,どの年齢でも他者感情推測あり群よりもなし群で多かった。つまり,被害児の表情がポジティブな場合,被害児の感情推測を促す介入による幼児の謝罪への効果が認められるのは6歳以降である。
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