研究概要 |
今日,テストを用いたさまざまな教育評価場面で,段階評価の必要性が急務となっている.というのは,たとえば,100点満点のテストにおいて,65点と70点の間には実質的な学力差はないにも関わらず,テストの(連続的な)得点の結果を用いて,学力評価や入試選抜に用いている.現に大学入試センター試験などの大規模公的試験から,個別学校入試まで幅広くテストの連続得点を用いて選抜や評価を行っている.しかし,実際の学力評価場面では学力を5段階程度に分類できれば十分であるという教育現場の教員の方々の意見もある. テストは,体重計や身長計のように解像度(信頼性)が高くない.体重計はわずかに異なる2人の体重を見分けることができるが,テストはわずかに異なる2人の潜在特性(学力)を見分けることができない.つまり,テストができるのは,せいぜい受験者集団を大きくとも10か20のグループに段階評価することである.したがって,学力を段階評価するテスト標準化理論が必要である. 多くのテストの実務家がすでに知っているように,テストの信頼性は非常に高いとは言えない.したがって,学力を段階評価しながらテストを標準化するためのテスト理論があれば便利である.申請者は,そのような背景から,潜在尺度に順序尺度を仮定したテスト理論であるニューラルテスト理(neuraltest theory, NTT)の開発を進めている.本年度は,理論的な基盤を整備するとともに,専用のソフトウェアを開発することができた.また,他機関の研究者たちと研究協力を行うことができた.また,日本テスト学会でセッションとして企画された.
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