研究概要 |
本研究では,自閉症スペクトラムの自伝的記憶について,(1)機能,及び(2)想起に影響を及ぼす要因について多角的に検討することを目的としている。 (1)の自伝的記憶の機能については,本年度,定型児の中学生1000名を対象とした調査を実施した。その結果,子どもの自伝的記憶には少なくとも「自己」「社会」「感情調整」の3つの適応的な機能があることが示された。また,それらの機能は,社会的スキル・能力との間には有意な中程度の相関があることがわかった。これらのことより,自伝的記憶は,子どもの発達に適応的に機能することが示唆される.このような機能が自閉症スペクトラムの子どもの語られた自伝の中に認められるかを検討することが今後の課題である. (2)の自伝的記憶の想起に影響を及ぼす要因については,それを検討するための実験研究を行った.対象は,自閉症スペクトラムの子ども16名、定型発達の子ども12名であった.内容は、自伝的記憶想起課題とナラティブ能力課題の2つの課題を同時に行うもので,これにより両パフォーマンスの関連について検討した。また、この実験では、学習活動への動機づけが自伝的記憶の想起に及ぼす影響についても検討した。結果は,自閉症スペクトラムの自伝的記憶の想起には,ナラティブ能力と動機づけの両方が関連することを示唆した.今後は、サンプル数を増やし,結果の信頼性と妥当性を高かめていくことが課題である.
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