この研究は、「国立長寿医療センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の長期縦断調査データを用いて、サクセスフル・エイジングの心理的側面である「主観的幸福感」を高く保つための要件を解明するものである。 1. データ収集:NILS-LSAでは40~80歳代の地域住民(性・年代ごとに層化無作為抽出)を対象に約2年ごとに縦断的に調査を実施している。今年度もその第6次調査として自記式調査票および面接調査により、主観的幸福感、社会経済的地位、家族の有無、生活活動能力、対人関係、社会参加状況、認知機能、ライフイベントなどのデータの収集を行った。 2. 成果:NILS-LSAの第5次調査までのデータを用い、以下の研究を行った。まず主観的幸福感と生きがい、および有職者の仕事コミットメントとの関連について検討した。男女ともに生きがいとしての「身近な人間関係」の主観的幸福感に対する正方向の影響が示されるものの、それ以外では男性は「健康・身体活動」のみが、女性では多様な領域での生きがいが関連することが示唆された。 また仕事満足感は主観的幸福感と正方向で関連するが、仕事へののめりこみの強さは主観的幸福感と関連性を示さなかった。さらに、主観的幸福感、およびサクセスフル・エイジングの重要な側面とされる「死に対する態度」について、性格特性との関連を検討した。その結果、性格特性の神経症傾向、外向性、調和性、誠実性の4側面は主観的幸福感と相関関係を示すが、死に対する態度とは部分的にしか関連を持たないことが示唆された。このことから、総合的な解析を行う際にサクセスフル・エイジングの指標による差異も念頭に置く必要があると考える。
|