研究課題/領域番号 |
21730540
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
丹下 智香子 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 予防開発部, 研究員 (40422828)
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キーワード | 生涯発達 / サクセスフル・エイジング |
研究概要 |
本研究は「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の長期縦断調査データを用いて、サクセスフル・エイジングの心理的側面である「主観的幸福感」を高く保つための要件を検討するものである。 1.データ収集:NILS-LSAでは40~80歳代の地域住民を対象に、約2年ごとに縦断調査を実施している。今年度も第7次調査として自記式調査票・面接調査により、主観的幸福感や、説明変数として使用するデータの収集を行った。 2.研究成果:NILS-LSAの第6次調査までのデータを用いた。まず、成人中・後期を対象に日常生活活動能力(ADL)と主観的幸福感の関連について検討した。その結果、ADLの低さは主観的幸福感の低さに関連することが示された。この結果を受けて、ADLの低下に伴う主観的幸福感の低下を防ぐ緩衝要因を探るため、成人後期を対象に「認知機能」および「家族内役割」の効果について検討した。認知機能の効果については、男性では初老期において認知機能が高ければADLの程度にかかわらず主観的幸福感は高いが、認知機能がやや低い場合、ADLの低下とともに主観的幸福感も下がる可能性が示唆された。より年長の世代では認知機能にかかわらず、ADLの低下に伴い主観的幸福感が低下することが示唆された。女性では基本的にはADLが高い方が主観的幸福感も高いものの、その関係には認知機能が影響し、認知機能が高い場合にADLの低下に伴う主観的幸福感の下がり方が顕著であることが示唆された。家族内役割の効果は男性では示されなかったが、女性ではADLが低い場合に「家事」や「相談相手」の役割を持つことが主観的幸福感の低下を防ぐことが示唆された。 これらの知見は加齢に伴う主観的幸福感の低下を防止する緩衝要因の一端を示すものであり、今後さらに他の要因について同様の検討を行っていくことが重要と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実施計画として挙げた、「生活の質」の低下と主観的幸福感の変動の関連の検討、および「生活の質」の低下/悪化に伴う主観的幸福感の低下を防ぐ緩衝要因の検討に関して、日常生活活動能力の側面から研究を進め、研究発表を行った。その他、身体機能、主観的健康感などに関しても未発表ながら解析を行っているため、ほぼ計画通りに研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
NILS-LSAで現在進行中の第7次調査のデータ収集をすすめ、それが終了した段階で第1次調査~第7次調査の縦断データベースを作成する。そしてこのデータベースについて、これまでに本研究で得た知見をもとに組み立てた高齢期における主観的幸福感の維持に関する総合的なモデルの有効性を検討する。その際、縦断的解析に適した混合効果モデルや共分散構造分析などの手法を用いる。
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