研究概要 |
平成22年度は,研究1として,平成21年度に引き続き催眠感受性および催眠に対する被催眠者の知識・信念である催眠状態イメージと自己変容への期待との関連について検討することを目的とした。自己変容の必要性を反映する指標として,生きがい感スケール(近藤・鎌田,1998)を用い,現在の自分の日常生活の捉え方と催眠状態イメージおよび催眠感受性の関連について検討した。その結果,被催眠者の人生や物事に対する積極性の高さが催眠に対する積極的な構えを生じさせ,催眠感受性に影響を与えている可能性が示唆された。また,日常生活における意欲が低く,かつ催眠に対する期待の高い参加者は,催眠に対する期待の低い参加者よりも,催眠状態になると主体性を失い催眠者にコントロールされるというイメージを持っていることが示された。こうした催眠状態に対するイメージの高さは,日常生活における現状に変化をもたらしたいという期待を反映していることが示唆される。今回の結果より,催眠に対する期待や動機付けの高さが同じであっても,その背景は参加者の日常生活における態度によって異なることが示されたことは,催眠療法の効果の違いを説明する重要な要因となるであろう。 また,21年度研究から得られた知見より,催眠を受けてみたいかどうかといった催眠への態度自体も自己呈示の影響を受けている可能性が考えられたため,研究2では,Implicit Association Test(IAT)を用いて潜在的催眠態度の測定と催眠状態イメージや催眠感受性の関連について検討を行うことを目的とした。しかし,IATでは課題の特性から潜在的催眠観を反映した課題の作成が困難であると判断し,年度途中より,Go/No-go Association Task(GNAT課題)に切り替えて,潜在的催眠観の測定を行った。23年度も引き続きGNAT課題により潜在的催眠態度のデータを収集し,分析を行う。
|