研究概要 |
平成23年度は,研究1として平成22年度から継続している研究であるGo/No- go Association Task(GNAT課題)を用いた催眠に対する潜在的態度と,被催眠者の催眠に対する信念(催眠観),質問紙による催眠に対する態度,および催眠感受性との関連について検討することを目的とした。催眠療法を自ら希望するクライエントの中には,催眠に対する過剰な期待や催眠の効果に対する誤った理解のため,十分な効果が得られない場合があることが指摘されている。催眠に対する潜在的な態度を測定することで,そうした過剰な期待や認知的側面と催眠に対する態度を分けて,催眠感受性との関連を捉えることが可能になると考えられる。現在,40名程度のデータが集まっているが,潜在的態度とその他の要因の間に明確な関連は得られておらず,さらにデータを収集してより詳細な検討を行う必要がある。 また上記の研究を補完するため,研究2ではこれまでに得られた催眠観のデータを再分析し,催眠態度および催眠感受性との関連を検討した。その結果,これまで「主体性喪失イメージ」と「潜在能力解放イメージ」の2因子で考えてきた催眠観を,「記憶・感情回復」「自己コントロールの喪失」「解離・離人様体験」「普段以上の能力発揮」「リラックス体験」の5因子で捉える方がより適切であることが示された。そしてこの5因子によるクラスター分析から得られた5つのクラスターと催眠態度を独立変数として,催眠感受性を従属変数とした2要因分散分析の結果からは,催眠で自己コントロールの喪失だけが生じると考えてる群においては,催眠態度が高い場合に催眠感受性が減少するという結果が得られた。従来の研究では,催眠態度と催眠感受性の間に正の相関があることが示されてきたが,被催眠者が催眠に対して持つ信念によっては,催眠に対する態度の高さが催眠感受性に対してマイナスに影響することが示され,このことからも認知的側面の影響を受けない潜在的態度を測定する必要性が示唆された。
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