本研究では、抑うつ、不登校、ひきこもりといった心理的不適応に対して、家族療法やシステムズアプローチあるいはブリーフセラピーとして知られている生態学的視点からの理解と支援のあり方を検討することを目的とした。 平成21年度は、手始めに、抑うつの生態学モデルであるCoyne(1976b)による"抑うつの相互作用モデル"の検討を行うことを目的とした。今年度は、文献検討を行い、必ずしも結果が一貫しているとは言い難い先行研究の問題点等を検討し、今後より精緻な実験的検討を行うために、大学生を対象として、抑うつの程度と重要な他者の選好との関連に関する予備調査を行った。 その結果、抑うつ得点が高い高抑うつ者は、低抑うつ者に比べ、重要な他者として家族を選好し、一方低抑うつ者は、高抑うつ者に比べ、重要な他者として友人や恋人を選好する傾向がみられた。 本結果は、高抑うつ者は低抑うつ者に比べ、社会との関わりの希薄で、相対的に家族との関わり深いことが反映されたものと考えられる。加えて、従来大学生を対象とした抑うつの相互作用モデルの検討において、重要な他者の関係性として主に友人やパートナーが使用されてきたが、高抑うつ者-友人・パートナー関係と低抑うつ者-友人・パートナー関係ではそもそも意味合いが異なっており、こうした要因が先行研究の結果に影響している可能性が示唆された。
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