本研究では、抑うつ、不登校、ひきこもりといった心理的不適応に対して、家族療法やシステムズアプローチあるいはブリーフセラピーとして知られている生態学的視点からの理解と支援のあり方を検討することを目的とした。 平成22年度は、Coyne(1976b)による"抑うつの相互作用モデル"における重要な他者による拒絶仮説の検討を行うことを目的とし、持続が見込まれる関係にある同性の大学生ペアのコミュニケーション場面に関する実験的検討を行った。 その結果、会話場面において、高抑うつ者のパートナーは、低抑うつ者のパートナーに比べ、反応を示すうなずきを伴う反応を示す言語回数が有意に低く、また反応を示すうなずき回数も低い傾向がみられた。 本結果は、高抑うつ者は、低抑うつ者に比べ、受容や共感の指標となる反応を示すうなずきを伴う反応を示す言語や、反応を示すうなづき回数が低いことを示しており、「抑うつ者は重要な他者から拒絶される」とするCoyneモデルの拒絶仮説を支持するものである。今後、ターゲット側のコミュニケーションの要因も絡めて分析を行う必要があろう。
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