これまでの研究成果を踏まえ,日本心理学会第76回大会ワークショップ,『現場に役立つ心理学(3)―認知リハビリテーション領域における基礎と臨床の融合―』において,「DEX(遂行機能障害の質問表)のpsychometricsとその応用」として,(1) 健常大学生の回答をもとに,DEXのpsychometricsの検討,(2) パーソナリティ特性との関連の検討,(3) 精神医学的・臨床心理学的症状傾向との関連をまとめて報告した。これらの検討から,DEXにより個人差を考慮することで,性格や行動の詳細な評価につながること,点数の高低の意味が再考されること,遂行機能の評価がパーソナリティや感情などの生物学的な理解につながること,さらに,"transdiagnostic approach"のひとつとして,遂行機能の評価を行うことで精神医学的・臨床心理学的症状を,基礎心理学的な知見で説明することや基礎心理学的な方法で解明することへの萌芽が見出された。 この他の成果としては,筑波大学心理学研究に「境界性・依存性・回避性パーソナリティ障害傾向と遂行機能障害との関連」論文、また、「抑うつにおける実行機能 ―反すうの観点から―」論文を投稿した(印刷中)。前者は昨年度までの研究成果を論文化したものであり,後者は,抑うつと遂行機能との関連につき,反すうという新たな視点から考察した総説論文となっている。 遂行機能障害傾向と各種の心理機能障害傾向との関連については,本種目研究期間終了後も継続して実施する必要がある。
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