研究の概要 広汎性発達障害児の社会的予後は、心理学的介入(療育)を早期に開始できるかどうかによってきまる。近年、妥当性の高い早期兆候として、「注視点の異常」が指摘されている。この所見は早ければ1歳前後で得られることから、注視点の異常の存在を正しく評価できれば、広汎性発達障害を早期に見いだし、療育を早期に開始できる可能性が広がる。そこで、われわれは、静岡大学工学部海老澤教授の協力を得て、新たに開発した頭部固定の不要な注視点検出機器を用い、広汎性発達障害児の注視点の異常の検出法を確立する。 方法 2~12歳の定型発達児20名および5~9歳の自閉症をはじめとする広汎性発達障害児17名を対象とした。児を装置の前に安座させ、画像を呈示して、30分の1秒ごとの間隔で近赤外線を用いた注視点検出を行った。刺激画像として、女性の顔の静止画、動画を用意し、それぞれ40秒提示しつつ、眼領域、口領域、それ以外の領域に注視点が何回とどまったかを検出し、データとした。 結果 広汎性発達障害児は、定型発達児と比較して、静止画呈示の際に口領域およびその他の領域に有意に頻回に注視点が集まった。ただし、この傾向が確認されたのは広汎性発達障害児全児ではなかった。 結論 定型発達児にくらべて広汎性発達障害児の「目を見ない」傾向が確認され、また、新しい機器によって効率よく検出できることが示された。
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