研究概要 |
自我漏洩感とは,「感情や思考などの内面的情報が意図しないのに他者に伝わってしまう」と感じる心理的症状である.診断学的に重要な症状とされる半面,思弁的な精神病理学研究や文化的側面からの検討が多く,実証的な研究がなされてこなかった.自我漏洩感に関する筆者らの実証的研究によって,自我漏洩感の発生状況・苦痛が発生するメカニズム・苦痛が持続するメカニズムが明らかになっている.今後は,自我漏洩感を持つ人を認知行動療法に導入する際に工夫すべきことについて実証的な知見を得たい.本研究課題は,自我漏洩感の心理教育プログラムを開発することを目的とする. 自我漏洩感の心理教育プログラムを作成する際に,自我漏洩感の中心的な特徴に焦点を当てることが欠かせない。平成22年度においては,自我漏洩感の中心的な特徴として関連づけ的思考(referential thinking)を取り上げて,その測定法を探索した。中でも,Lenzenweger,Bennett, & Lilenfeld(1997)によって開発されたReferential Thinking Scale(REF)が有用であったため,この尺度の日本語訳を作成した。大学生サンプルにおける基本統計量から,欧米の大学生サンプルと同等の体験率が確認された。α係数と再検査信頼性の係数から,信頼性の高さが確認された.また,SPQ等のSchizotypyに関する尺度と有意な正の相関が見られ,妥当性が確認された.現在学術雑誌に投稿予定である.
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