本研究では、Takeda et al.(2009)が作成したTakeda Three Colors Combination Test(TTCC)を改良し、識字や教育歴などの影響を受けない検査を開発し、早期段階にあるアルツハイマー病(AD)ADを対象としTTCCのスクリーニング検査としての有用性について検討することを目的としている。当該年度では、TTCCを識字や教育歴の影響を受けない検査とするために、用いる干渉課題を改定した。改定するにあたって、ADの病初期でみられる認知障害や健康高齢者の認知構造についての文献のレビューや調査を詳細に行った。その結果、逆唱課題が干渉課題として妥当であると仮定されたため、TTCCで用いる干渉課題を、従来の計算から逆唱へと改定した。逆唱は、3ケタと4ケタの数字の逆唱とした。一方、研究協力機関において対象の選定を進めた。TTCCは、ADの早期発見を目的とするスクリーニング検査であるため、対象は軽度AD患者からなる群と健康高齢者からなる対照群の2群とした。軽度AD群は、DSM-IVによりADと診断され、Mini-Mental State Examination(MMSE)得点が20点以上でClinical Dementia Rating(CDR)により重症度0.5または1と判定された者とした。一方、対照群は、もの忘れの訴えがなく、DSM-IVにより認知症の診断基準を満たさず、MMSE得点は26点以上かつCDRが0の者とした。いずれの対象者も60歳以上で顕著な視覚障害を有さない者とした。データを集積し、軽度ADをスクリーニングするうえでTTCCが有用であるか否か、現在解析を進めている。これまでの結果は、第24回日本老年精神医学会において発表された。当該年度における研究は、ADを早期発見するためのスクリーニング検査を開発するにあたり、その基礎的データを構成するものであり、より感度の高い有用なADスクリーニング検査を作成するために不可欠な内容となった。研究終了年度である次年度に向けて、データの集積と解析を進め、AD早期発見を目的としたTTCCの有用性について検討を進めていく予定である。
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