本研究では、認知症の代表的疾患であるアルツハイマー病(Alzheimer's disease ; AD)を早期にスクリーニングする検査である竹田式三色組合せテスト(The Takeda Three Colors Combination Test ; TTCC)を開発することを目的とした。TTCCは、3色の正方形の組合せからなる図形を記憶し、記憶とは無関係な数字の逆唱による干渉課題を行った後に、3枚のカードを用いて記憶した図形を再生する課題から構成した。再生に成功すると陰性(ADの可能性は低い)、失敗すると陽性(ADが疑われる)と判定する。一連の研究より、TTCCは軽度ADをスクリーニングするうえでの感度85%、特異度87%を示し、十分な信頼性と妥当性が確認された。従来用いた見本刺激と異なる2種類の新たな図版を用意したが、これらにおいても同様の結果を得た。また、すべての対象者において検査への拒否または抵抗を招かず、実施から評価まで2分以内で完了した。加齢を最大の危険因子とするADは、今後人口の高齢化と併せて確実に増えることが予想される。一方、ADを早期に発見できると、薬物療法等により進行の遅延や症状の改善が期待できるため、早期発見を可能にするスクリーニング検査の開発が望まれている。しかし、従来のスクリーニング検査は、時間がかかりすぎ、実施にあたって練習が必要であるうえに被検者を不快にさせるという問題が指摘されていた。本研究の結果より、TTCCはADの軽度段階での検出力が高く、臨床家にとって使いやすく、被検者にとっても大きな負担とならないスクリーニング検査であるため、認知症専門機関はもちろん、かかりつけ医や地域での検診など幅広く用いることが可能であることが示唆された。
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