本研究の目的は、身体化するクライエントに対する心理的援助のうち、イメージを中心とする心理療法の有効性について探索的に検討を行うことである。今年度は、身体化の心理療法に関する国内外の文献の収集・文献研究を行った。身体化には、神経症、心身症、身体疾患という3つのレベルがあるが、本研究では慢性疾患としての乳がんに焦点を当てたところ、心理的視点からの先行研究は、看護学や精神医学領域の研究が大勢を占め、質問紙法を中心とする研究方法の問題点があること、心理的援助に関する研究は患者会などの自助グループ、グループアプローチ、心理教育に関するものが多く、個別心理療法の研究が少ないことなどが見出された。身体疾患患者の心理的特徴を理解するうえで意識レベルを測定する質問紙法では限界があり、投映法を用いて病態水準という観点からアセスメントを行うことの必要性が指摘されているが、質問紙法以外にはロールシャッハテスト、終末期患者のバウムの事例報告が散見される程度である。また乳がん患者のアレキシサイミア傾向を示唆する先行研究もあり、言語化された不安・葛藤の有無という次元に着目するだけはなく、投映法を組み合わせたアセスメントを行う研究の必要性が明らかになった。また本調査に向けて予備調査を行い、投映法の実施と併せて半構造化面接を行うためのインタビューガイドを作成した。半構造化面接では、調査協力者の心理的負担に十分配慮し、調査に参加するプロセスが何らかの心理的援助としての意味を持つように留意したが、現在本調査を開始しており、質問項目などは今後引き続き精緻化を行う予定である。平成22年度以降は、本調査を継続実施し、臨床心理学的面接を行う中でデータの集積、検討を行う予定である。
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