研究概要 |
本研究の目的は、身体化するクライエントに対する心理的援助のうち、イメージを用いた心理療法の有効性について探索的に検討を行うことである。本年度は、昨年度より継続中の、乳がん者に対する心理臨床学的援助についての国内外の文献研究を行い、最新の知見として、Olga Horgan, Chris Holcombe and Peter Salmon(2011)の論文を「乳がん診断後のプロセスの中で肯定的変化を体験するということ-グラウンデッド・セオリーによる分析」として精神療法に紹介した(現在印刷中)。また乳がんという病いの体験に伴う変化のプロセスや心理的支えなどについて検討することを目的とする本調査Iの継続を行った。調査協力者は昨年度に引き続き、乳がん術後の放射線治療中の女性であり、半構造化面接とTAS-20、バウムを実施した。質問紙法や面接よりも、投映法であるバウムにおいて、乳がん者の抱える不安やしんどさがより明確に表現される傾向が示唆されている。また本調査IIとして、研究への協力同意が得られた人に対して、箱庭療法の経時的調査も引き続き行った。箱庭を契機として、言語面接とは質の異なる語りが展開されることが多く、乳がん者に対する心理的援助としての箱庭の可能性が示唆されている。
|