研究概要 |
本研究は,大学生のソーシャルサポート向上のための心理教育プログラムの開発を目的とするものである。平成21年度の研究結果から,家族および友人へのサポート提供を促進させることは,サポート提供者のサポート受容の向上につながること,家族や友人へのサポート提供促進には,関係維持スキルと記号化スキルの向上が有効であることが明らかとなった。そして,これらのスキル向上には,カウンセリングの領域で扱われる積極的な傾聴スキルの習得が有用であることが示唆された。そこで,平成22年度は,他者への積極的なサポート提供の促進を目的とし,筆者が分担担当している教養科目の受講生を対象に,2010年6月1日に積極的な傾聴スキル習得のための心理教育を実施し,効果を検討した。相川(2000)を参考に,「受容的態度」,「効果的な質問」,「反射させながら聴くこと」,「身体を使って聞くこと」,「相手のしぐさを読み解くこと」の5つのスキルを取り上げ,それぞれに関する解説と紙面を用いたワーク,周囲の人との意見交換を行った。授業実施前と実施後1週間後に質問紙調査を実施し,効果評価を行った。2度の調査に回答し,欠損値を除外した112名をデータ解析の対象とした。効果評価の指標として,(1)傾聴に関する知識,(2)関係維持及び記号化スキル(相川・藤田(2005)の一部),(3)サポート提供(福岡(1997)の尺度の一部を改変)を測定した。対応のあるt検定を行った結果,(1)傾聴に関する知識と記号化スキルが向上し,(2)家族および友人へのサポート提供量が増加する傾向が認められた。関係維持スキルには統計的に有意な変化は認められなかったものの,ソーシャルサポート提供を促進しうるプログラムの有用性と改善点が明らかとなった。これらの成果は,今後のプログラム作成における介入課題を考案する上で有意義な結果であったと言える。
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