研究概要 |
本年度は,大学生のソーシャルサポート向上のための心理教育プログラムを構成・実施し,その効果について検討した。心理教育の実施は2011年6月中旬~末にかけて,筆者が担当する予防教育に関する講義の受講生165名を対象に2回に分けて行った。第1回目では,堀(2008)に基づき,他者からのサポートを効果的に引き出し,活用するための一連の行動手続き習得に関する心理教育を行った。第2回目では,昨年度の研究に基づき,他者との信頼関係促進のための傾聴スキルに関する心理教育を行った。効果測定のため,2回の心理教育実施前後で質問紙調査を実施した。受講生の大半が1年生であったため,対象を新入生に限定し,欠損値を除外した103名をデータ解析の対象とした。効果評価の指標として,(1)ソーシャルサポートの活用や傾聴のための知識,(2)関係維持及び記号化スキル,(3)サポート希求行動,(4)サポート提供・サポート受容,(5)精神的健康度を測定した。 効果評価指標について,対応のあるt検定を実施したところ,知識,記号化スキル,サポート希求行動,サポート提供,精神的健康度において有意な差が認められ,いずれも受講前に比べて受講後の改善がみられた。関係維持スキルに関しては,受講前に比べ受講後の改善傾向が認められた。一方,サポート受容に関しては,受講前後で向上はみられるものの,統計的に有意な差は認められなかった。以上の結果から,ソーシャルサポート受容そのものを大幅に向上させることはできなかったが,実際の予防教育の授業において実施可能な形態で,大学生のソーシャルサポート向上に関わるスキルや行動の改善に寄与する心理教育プログラムが作成された。このことは,大学生への予防教育を実施していく上で意義深い結果であるといえる。
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