研究概要 |
代表的な消化器心身症の1つに過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome, IBS)がある。IBSは若年層に多く見られ,特に大学生年代は好発期であり日常生活や学業に支障を来たす者も多い。その発症や経過にはストレスが深く関与しているため,柔軟なストレス対処が症状予防・軽減の鍵となると予想される。本研究では大学生を対象に,IBSとストレス対処の柔軟性の関連について心理生理学的に検討する。 本年度は,初めに調査項目とストレス負荷実験のプロトコルについて検討した。IBSに関する尺度としてRome II Modular QuestionnaireとIBS Severity Indexを,認知的柔軟性を捉えるテストとしてWisconsin Card Sorting Testを用いた。また,IBSと睡眠障害の関連を示唆する先行研究に基づき,ピッツバーグ睡眠質問票も調査項目に加えた。ストレス課題にはアナグラムを用い,全て解答可能な課題と,解答不可能な問題を50%含む課題の2種類を用意し,これらをコントロール可能場面/不可能場面とした。ストレス負荷による心理生理的変化を捉えるための測定ポイントとして,安静時→コントロール可能場面→休憩後→コントロール不可能場面→休憩後の5点を設定し,各ポイントで新版STAI,唾液中αアミラーゼ,コルチゾール,クロモグラニンAを測定した。 以上の手続に従い,まず予備的分析として,大学生34名のデータについて「認知的柔軟性/睡眠の質がストレス負荷時の心理生理的反応に及ぼす影響」を検討した。この結果,認知的柔軟性の低い者や睡眠の質が悪い者の特徴として,ストレス負荷に伴うストレス反応が強まりやすいこと,休憩後もストレス反応が持続しやすいことが示唆された。今後は,IBS有症状者と無症状者の比較などを行いながら,より詳細に分析を進めていく予定である。
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