本研究は、セラピストの曖昧さへの態度に着目し、心理臨床的援助及び精神的健康の向上につながる態度を明らかにすることを目的としている。セラピストの曖昧さへの態度は日常場面と臨床場面では異なると考えられ、本研究では特に心理面接場面における曖昧さへの態度に焦点をあてて進めることとした。本年度は、臨床心理士を対象とした半構造化面接による調査から得られたデータの整理と分析を行った(次年度発表予定)。心理面接におけるセラピストの曖昧さへの態度のもつ意味は、肯定的意味と否定的意味にわたる下位カテゴリーに分類され、曖昧さへの肯定的態度の方が肯定的意味をもちやすいが、曖昧さへの否定的態度のもつ肯定的な働きについても示唆された。さらに曖昧さへの5つの態度においてもその意味の詳細は異なっていた。また、心理面接におけるセラピストの曖昧さへの態度の自由反応について分類を行った結果、日常場面における態度と大きな分類としては共通するものの、心理面接では生じにくい態度や心理面接特有の態度もみられた。そこで本調査の結果を考慮し、心理面接における曖昧さへの態度尺度原案の内容について修正を行った。本調査の結果から、心理臨床的援助に役立つセラピストの要因としてセラピストの曖昧さへの態度を取り上げて各態度から検討していく意義と、その際に現行の曖昧さへの態度尺度では心理面接特有のセラピストの態度を捉えきれず、新たな尺度作成を含めて検討していく必要性が示された。
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