研究概要 |
本年度は、昨年度までに行った臨床心理士を対象とした面接調査の研究成果について、心理学関連諸学会での発表を行った。またその結果をふまえて、心理面接におけるセラピストの曖昧さへの態度の様相を把握するための尺度作成、およびその特徴を心理臨床経験やセラピストの自己効力感との関連から明らかにすることを目的として、心理臨床家を対象とした質問紙調査研究を実施した。質問紙は、(1)心理臨床経験、(2)セラピストの曖昧さへの態度尺度(本研究課題で作成)、(3)カウンセリング自己効力感尺度(葛西,2005)、(4)日常版曖昧さへの態度尺度(西村,2007)で構成されていた。調査は無記名の郵送回収形式により実施した。その結果、心理面接場面に特有の項目からなるセラピストの曖昧さへの態度尺度が作成された。本尺度は、日常版曖味さへの態度尺度に準ずる肯定的・否定的態度からなる因子で構成されていた。さらに、曖昧さへの不安など否定的態度は、臨床経験が長い人ほど持ちにくいといった心理臨床経験との関連や、カウンセリング自己効力感との関連も示唆された。本研究の結果から、よりよい心理臨床的援助について検討していくための一つの視点として、心理面接におけるセラピストの曖昧さへの態度に着目することの意義が示された。なお、本年度に実施した研究成果については、24年度に心理学関連の諸学会で発表予定であり、今後もさらなる検討を進めていく予定である。
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