研究概要 |
平成21年度の研究の実施計画は,アクションリサーチとしての自死遺族支援ネットワークへのアプローチによって,ネットワークや支援組織の中で生じている問題を同定することと,定性的調査としての自死遺族支援者の"語り"の調査を通じて前述の問題についての文脈や相互作用を把握することであった。 前者については,A県内において行政が後援している自助グループや自殺対策に関する行政職研修会等において参与観察し,支援者の自己物語の内容に関わらず,自死遺族との交流を通じて二次受傷やバーンアウト,逆転移が生起されるような問題が内在していることが示唆された。したがって,支援者の調査においてはこうした側面を十分に配慮しておく必要性が考えられた。 後者については,自死遺族支援の従事者9名との面接調査を実施することができた。そのうち3名は良原(2009)においても調査協力しており,当時の語りと比較しながら面接を実施した。そこでは支援の場における相互作用性が多重に絡み合うほど,支援者の物語に影響を与えることが示唆された。またそうした物語の"展開"の促進は,支援者の生活世界との状況が大きく影響しており,部分的には良原(2009)の物語的構成モデルを確認することができた。平成22年度では,さらに面接協力者を増やし,さらにモデルの検証を行うこと,またこの調査のデータから項目を抽出し,既にDV被害者支援者に対して作成されている良原ら(2010)の継続要因尺度を自死遺族支援者にも施行することで,健全な支援関係の構築に寄与することをねらいとしている。 なお,今年度は民間ボランティアによって運営されているサポートグループにおける開始以来3年間の参加者のグループの志向と継続動向について定量的に論考した論文を出版したが,さらに定量的調査を継続することで,サポートグループに参加する自死遺族の傾向について実証的な理解を深めることをねらいとしている。
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