改正教育基本法の施行により、"豊かな人間性と創造性"が掲げられており、創造性が注目されるようになった。その思考プロセスである発散的思考と収束的思考については多くの創造性技法が生み出されたものの依然として不明な点が多い。その理由の一つは、アイデア創出にかかわる発想についての心理学研究がほとんどなされていないことによる。 本研究の目的は、ブレインストーミング法を習得させるための学習教材の開発を行い、心理データの測定と評価を通して、コミュニケーション中の心理メカニズムの詳細を明らかにすることであった。 本研究で新規に開発したアイデアカード(IDEACARD)は、ブレインストーミング法の4つのルール(批判禁止、質より量、他の人に便乗、突飛な意見歓迎)が盛り込まれた4種(各10枚)とチャンスカード(10枚)から構成された。これらのカードを手掛かりに、プレイヤーは制限時間内にアイデアをたくさん出すことが求められた。 実験の結果、ストレス高群の抑うつ感と不安感が軽減されることを確認した。さらに、この認知過程における対処方略(管理、回避、接近、評価)を測定したところ、回避と接近より評価と管理に関する方略を多く採用することが明らかとなった。すなわち、ゲームに積極的に参加することで、ストレス感が軽減されることを見出した。 本研究は、創造性技法を用いて心理データを初めて取得した研究として意義深い。また、その最大の成果は、ブレインストーミング中の認知的対処の状態を取得したことにある。
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