研究概要 |
本研究は,青年期にみられる破壊的行動に対し,構造化筆記を用いた有効な介入法を開発することを目的としたものである。その際,従来提唱されてきた理論モデルに基づき,構造化筆記によって情動体験の回避を直面へと変化させることにより,破壊的行動をより適応的な形態に置き換えることを目指した。 研究は,1.青年期破壊的行動への介入としての構造化筆記法の開発,2.開発された構造化筆記法についての効果検討,という2つのパートから構成された。本年度は昨年度に引き続き,1.において作成された筆記法を実験材料として,2.の研究を実施し,完了させた。 最終的に,構造化筆記群17名,統制群14名の計31名からデータが得られた。自己破壊的思考や感情調整の自信などの諸変数を従属変数として,実験条件(構造化筆記群・統制群)×測定時期(プレ・1w後・4w後)の2要因混合計画にもとづく分散分析を行ったところ,感情調整の自信などの変数で実験条件と測定時期との間の交互作用が認められ,下位検定の結果,それらの変数に対する構造化筆記のポジティブな効果が認められた。一方,自己破壊的思考に関しては,有意な交互作用は認められなかった。これらのことから,本研究において作成された構造化筆記法は,自己破壊に直接作用するというよりは,それと関わると考えられる,自らの感情を調整できるという自信等に効果を与えるとことが示された。本研究における知見は,広く,感情調整に困難を示す青年への介入を考える上で重要と考えられる。
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