研究概要 |
社会不安低減のために有効な介入方法を明らかにするため,会話場面を用いた実験的な検討を行った。大学生20名を対象に,Social Interaction Anxiety Scaleを実施し,平均値+0.5SD以上を高群,-0.5SD以下を低群,それ以外を中群に分類した。3群それぞれの実験参加者に対して,5分の安静期(pre期)の後,初対面の実験補助者と15分程度の会話を続けるように求めた。その際,2.5分間隔で主観的な不安の程度(SUD)を記録するよう求め,相互作用の様子をビデオ録画した。実験終了後に,心理学を専攻する2名の大学生が,行動評定尺度によってパフォーマンスを評価した。 pre期と,会話の前半7.5分(前期)・後半7.5分(後期)のSUD値の変化について,3群の間で差が出るかを検討したところ,3群ともに前期のSUDが最も高く,後期のSUD最も低かったが,群間の差は見出されなかった。行動評定に関しても,「視線」,「声の質」,「会話の長さ」,「体の緊張感と振る舞い」,「表情の緊張感」,および「会話の流れ」において,3群ともに時期の主効果が見られたが,群との交互作用は見出されなかった。これらのことから,社会不安の高低によって,不安の高まる度合いやパフォーマンスに客観的な差は見出されないが,すべての群で不安が高まると視線が合わなくなり,声が小さくなり,体や表情が固くなり,会話の流れが障害されること槻出された。以上のことから,行動評定の主観的・客観的側面に介入することによって,社会不安を低減できる可能性が示された。
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